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BS1「中国共産党100年 “紅い遺伝子”の継承」

てっきり共産党の思想教育を特集して「やべぇ〜一党独裁こえ〜」ってなる番組かと思ったら違った。このドキュメンタリーの主人公は地方の農村の幹部共産党員。幹部とはいえ、のどかな農村風景を前に下っ端役人的な雰囲気が漂う。

彼らが住むのは、片共産党ゆかりの地として”紅い観光地”で賑わっている村、片やいまいち村おこしが上手くいかず貧困に喘ぐ村。

賑わっている方の村には、習近平の訪問を受け、なんと年収が12倍(!)になったおじさんも。でも、その村の共産党幹部は上層部の無茶な指令に浮かない表情。眉にしわ寄せ、頭を抱え、いろんなところに電話をし……。前の職場でこんな顔した上司よく見たわ!あまりの理不尽&書類仕事に「俺は神じゃない」とぼやいてみたり。取材陣に「あなたの個人的な目標は?」と聞かれて、「大きな理想はない。日々の仕事を努力し、役割を果たすだけ。そうすることで党にも自分の良心にも顔向けできるのではないか」……少し間をおいて、「人が生きるってそんなこと」って答えたの、じんわりきたなぁ。今まで”共産党員”としか認識できていなかった中国の人も、同じように中間管理職的な苦悩を持つ人間なんだなと実感できた。そんな中で、村は党に評価されどんどん富を生み出していく。

一方、村おこしが失敗している方の村。なんかもう……何もかも上手くいってなくて応援したくなっちゃう。紅軍ゆかりの「一枚の借用書」の博物館を作るも、観光客が来ず電気代を滞納する始末。村の山にパンダ望遠鏡を設置してみたり(1人も人が来ない)、上層部との人脈を作るため村人で演劇祭に出たり(台詞ミスって最低評価で惨敗)……。最後、村の特産物の生姜を50kgも売ったのに滞納した博物館の電気代にもならないシーン、泣きそう。幹部は「息子が進学校に受からなければ幹部の仕事は辞め出稼ぎに出る」と言い残す。

村の観光地化に右往左往する2つの村の市井の人々が浮き彫りにするのは、「共産党の権力に近い方が富を得る、権力から遠いと貧困に陥る」という中国社会の歪み。「どんな場所でも、どんな国家体制の下でも、下っ端って大変よねぇ……」と一貫してミクロの視点に寄り添いながら、社会というマクロの問題点を描き出す秀作。



【あらすじ】

結党100年となる中国共産党。14億人を統治する「紅い遺伝子」とは?地方開発、思想教育、富と格差。ある地方の共産党支部の3か月の記録。見えてくる中国の現実。


結党100年を迎えた中国共産党は、14億人を一党独裁で統治している。「紅い遺伝子の継承」を掲げた新たな思想教育とは?習近平指導部が進める「原点回帰」とは。中国共産党の歴史は、現代にどう伝えられているのか。そして、多額の投資が動く地方開発、富と格差。ある地方の共産党支部の3か月の記録から見えてくる、中国のいまに迫る。

https://www.nhk.jp/p/bs1sp/ts/YMKV7LM62W/episode/te/L8R9Z118Z4/